テニスの聖地であるウィンブルドンの雨の名勝負
霧の都イギリス・ロンドンの郊外にあるウィンブルドンは、雨が多いことをご存知だろうか。
テニスのウィンブルドン選手権では、試合の雨天中断と再開の時のシート張りとシート撤収が名物になっているほど、試合に雨はつきものなのだ。
今日は、そんなウィンブルドンの雨が印象的な試合を紹介しよう。
時は、2008年ウィンブルドン男子シングル決勝。
対戦相手は、ナダルvsフェデラー。
スイスのロジャー・フェデラーは、当時26歳。ウィンブルドン5連覇中で、この試合で6連覇を狙う、世界ランキング1位の王者。
スペインのラファエル・ナダルは、当時22歳。全仏オープン4連覇で、世界ランキング2位。 2006年から3年連続で、ナダルvsフェデラーの同じ組み合わせでのウィンブルドン決勝戦となった。
2006年、2007年はフェデラーが連続で勝利し、ナダルは敗れていた。
「雨」のいたずらか。幾度となる中断がナダルとフェデラーを襲う
雨のために約35分遅れて始まった試合は、ナダルが第1・第2セットを連続で先取した。このままナダルの勢いになるかと思われたが、第3セットに入ってフェデラーがリードする。
しかし、ここで雨のため、約90分試合が中断される。
約90分の中断の間、2人はどのような気持ちで雨を眺めていたのだろう。
試合再開後、第3セットは、タイブレークの末にフェデラーが取り返す。第4セットもタイブレークになるが、フェデラーが取り、2-2の同点となる。
そしてついにファイナルセットに突入。
お互い1歩も引かないデッドヒートの第4ゲームが終了したところで、再び雨によって試合中断となる。
息もつかせぬ2人の戦いが中断され、観客はちょっと一息。
あたりはだんだん薄暗くなってきて、日没のため、サスペンデッドになる可能性も出てきた。
勝利の女神はどちらに微笑むか。4時間48分の歴代最長プレーの結果はいかに
約25分後に試合が再開され、第8ゲームでフェデラーがブレークチャンスを迎えるが、ナダルが抑える。
第15ゲームでフェデラーがデュースに持ち込むが、ナダルがブレークに成功。
そしてついに、第16ゲームでフェデラーのボールがネットにかかり、ナダルの勝利が決まった。
ナダルは勝利の瞬間、薄暗くなってきたコートに仰向けに倒れ、天に向けて手を伸ばして喜んだ。ナダルは、フェデラーとのウィンブルドン決勝戦を4年目にして勝ち取ったのだ。
観客はナダルの勝利を祝福するとともに、2人の名勝負に大きな拍手を送った。試合時間は、ウィンブルドン決勝戦の史上最長記録となる4時間48分。
このように長い試合が名勝負になったのは、雨で2度試合を中断したため、2人は体力を回復させることができ、最後まで全力で戦うことができたからではないだろうか。もし、雨が降っていなかったら、どのような結果になっていたのだろうか。
ウィンブルドン選手権の決勝戦が行われるセントラルコートは、この試合の翌年の2009年に開閉式の屋根が取り付けられた。現在、ウィンブルドンの決勝戦では、この試合のように長時間の雨天中断はないが、この雨の日の名勝負は今も語り継がれている。
Writer レニピ編集部