日が出ているのになぜ雨が降っているのか。
この雨はどこから来たのだろうか、と思うのは誰もが抱く「天気雨」についての素朴な疑問だ。
天気雨が降るのには、主に3つの理由がある。
1つ目の理由は、雨を降らせた雲がすぐに消えてしまうというもの。雲の中で雨が作られてから、その水滴が地上に到達するまでには、かなりの時間差がある。なので、人が雨に気が付いて、ふと空を見ると、もう雲が流されて、上空からなくなっている。
2つ目は、雨が流されたために起こるというもの。遠く離れた場所の上空で作られた雨粒が、強風で大きく流されて、別の場所で地上に降り注ぎ、そこがたまたま晴れていたという状況だ。
3つ目は、比較的小規模の雲が雨をふらせるというもの。これは、空のごく一部を占める部分にある雨雲が雨を作り、そこから降り注ぐという状況だ。雲が小さいので、空全体としては、晴れている。天気雨には、大まかにこの3つのケースが当てはまる。
「天気雨」というのは、晴れている(天気)のに雨が降るため、そう呼ばれるようになった。他には日照雨(ひでりあめ)と呼ばれることもある。ちなみに一つの傾向として、太陽光が雨に反射しやすいために、雲に覆われた空から雨が降る場合よりも虹が出現する確率が高い。
天気雨という不思議な現象は、日本では昔から「狐の嫁入り」と言い伝えられてきた。このように呼ばれるのは、雨が降っているのに晴れているという現実ではありえないような天候が、あたかも狐に化かされている様なため、こう呼ばれる。
古くから民話にも多く登場するように、狐は利口で、魔力のような力があると信じられてきた。人間を化かして嫁いでいくと伝承されており、その際に嘘で取り繕っているために天気雨が降るのだ。
日本では、宝暦時代(1751年から1764年)には既に「狐の嫁入り」についての記述が残されているが、興味深いのは、遠く離れた欧州、イタリア南部のカラブリアやサレント半島、そしてやイギリス南西部でも日本と同様に、天気雨のことを「狐の結婚」として例える。
この不思議な雨の降り方は、ドンピシャで「狐の嫁入り」とまでは、いかないまでも動物の結婚と関連付けられた様々な言い伝えが世界各地にある。韓国では虎、ブルガリアは熊、アフリカでは猿など。トルコでは悪魔の結婚と表現する。
現在では、科学が天気雨の原理を説明しているが、想像力あふれる伝承の方も子供たちに読んで聞かせたい、非常に興味深い物語だ。
Writer レニピ編集部