雨が眠っている花を目覚めさせる。スーパー・ブルームの美しい光景

2017/06/06

みなさんは「砂漠」と聞いたら、何をイメージするだろうか。
決して植物が育つことのない、荒涼とした一面の砂世界―
そんな無味乾燥だと思われがちな砂漠だが、時になんとも言えない、美しい光景を生み出すことがある。

その名も、「スーパー・ブルーム(Super Bloom)」。
なんと、砂漠が幻想的な花畑になるというのだ。

この不思議な魔法が起きる原因は、エルニーニョ現象である。エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなること。
それにより、台風と同じように南米付近で積乱雲が発達しやすくなることで、多くの雨が降る。そうして降り続いた大雨が砂漠に眠っていた花の種を目覚めさせ、一斉に花が咲く、というわけなのである。

では実際にその様子を見てみよう。
まずはカリフォルニア州にあるアンザ・ボレゴ砂漠。

通常は枯れた草とサボテンしかないようなこの砂漠が、エルニーニョ現象によって、美しくカラフルな花畑へと変貌を遂げた様子がこちら。

雨が降るまでの間、地中で眠っていたにも関わらず、決して色あせることのない花たちの生命力と美しさに、心が躍る。

続いて、彫刻家によって造られた巨大な手で有名なチリのアカマタ砂漠。世界で最も乾燥している砂漠と言われており、40年間雨が降らなかった場所もあるというほど。

しかし、2015年に起きたエルニーニョ現象では一晩で7年分の雨が降り、大洪水に見舞われた。普段は草一つ生えないその過酷な環境から「死への道」とさえ比喩されているアタカマ砂漠に、またたく間に美しい花々が咲き、見事なピンク色の絨毯が現れたのである。

最後に、デスバレー国立公園。アメリカで最大規模の国立公園の一つであるが、「死の谷」という恐ろしい名を付けられているだけあって、そこに広がるのはひたすら灼熱の荒野。全米の国立公園の中で最も広く、最も熱く、最も乾燥した、非常に過酷な環境と言われている。

しかし、その「死の谷」もエルニーニョ現象によって一変。まるで菜の花のような黄色い花が一斉に咲き乱れた。

何もない荒涼と立ちはだかる砂漠が魅せる、雨が降らなければ見ることができない姿。
わたしたちは雨が降ることに煩わしさを感じがちだが、砂漠の世界にとっては、まさに「恵みの雨」なのだ。もしも砂漠地帯に出向くことがあった際は、スーパーブルームの予兆である「エルニーニョ現象」を意識してみてはいかがだろうか。

 

Writer レニピ編集部

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