雨の日に咲く、傘の花を見て、どう感じるだろうか。
ビニール傘の無機質な花よりも、カラフルに色づく花の方が、心躍ることは間違いない。
幼い頃に見た雨の日の景色がキッカケで傘に興味を持ち、2009年にカサブランド「Roulette(ルレット)」を発足。国内外問わず、雨の日の空をカラフルに「お気に入りのMy傘を持とう」をテーマに活動を続ける人がいる。
その人は、眞壁和佳子さん。
傘に対する想いに触れた前編を経て、今回は眞壁さんが手がける傘ブランド「Roulette(ルレット)」の魅力を探ることで、傘が生み出す雨の日の楽しみかたに迫ろう。
レニピ:
あらためてお尋ねしたいのですが、眞壁さんご自身は「雨」が好きなのでしょうか。
眞 壁:
はい。私は雨の日が好きです。
もちろん、自分のカサを差せる楽しみもありますが、街中に出て皆がどのような傘を差しているのか見る事も楽しみの一つです。最近は息子と一緒に雨の日に外出することが多いのですが、息子も雨の日やカサが好きなようで、私が昔作った子供用のカサのサンプルを家の中で差してみたり、外に出て使おうとしてみたり。
お庭の草木に付く雨の雫を見て”きれいね!”と言ったり、雨の日にしか見られない表情や子供が雨が楽しいと感じる気持ちがあるんだなと思ってみています。
レニピ:
雨の日にしか見ることができない表情、という考え方は非常に面白いですね。
眞 壁:
そうですね。小さな子供は晴れの日であってもレインコートやレインブーツ、傘を使うのが大好きだと思います。
雨の日に一緒に連れて歩きながら外出するお父さんお母さんはとても大変だと思いますが、雨の日にしか見られない子供の表情が見られたりすると思うので、それを楽しみに変えられたらどうかなと。
雨の日も少しは好きになったり、待ち遠しくなったりするのではないかなと思います。
レニピ:
なるほど。今は雨の日を楽しむ、という広い捉え方でしたが、Rouletteの傘ならではの楽しみ方、などもあるのでしょうか?
眞 壁:
Rouletteのカサは手元と先端(石突)の部分が自由に取り外せるようになっています。そのため、他の色のカサと交換をして自分だけのオリジナル色のカサを作ることが出来ます。
いくつか持っていれば、雨の日毎に部品の色を変えて差せるので楽しみも増えます。
手元の部分を取り外せば旅行用の大きなトランクにも収納が出来るので海外にも自分のカサを持って行く事が可能です。
単色なので、洋服や靴や鞄とコーディネートしやすく、雨の日のファッションアイテムとして、更に楽しむことができます。
雨の日の暗い色の空にも映える色なので、Rouletteのカサを持っている方には、雨の日でも思いっきりおしゃれして、憂鬱な雨の日が少しでも前向きになるよう楽しんで欲しいと思っています。
レニピ:
確かに、雨の日のファッションというのは、濡れてもいいような服を選んだり、「楽しむ」という発想が薄い気がします。
眞 壁:
そうですね。
傘は「人」や「ファッション」を引き立てるアイテムになるはずなので、是非傘を使って雨の日のオシャレを楽しんで欲しいと思ってます。
また、ファッションという軸からは少しそれますが、Rouletteのカサは生地の張り方にもこだわっているため、ビニール傘では聞けない、カサを広げた開けた時の音や、雨がカサに落ちてきた時の音を聞くことが出来ます。
些細なことかもしれませんが、雨の日に、雨の落ちてくる音を聞きながら歩く時間もたまには良いのではないでしょうか。それが提供できるということも、魅力の一つです。
レニピ:
Rouletteは、細部に至るまで眞壁さんの思い入れが詰まっているんですね。
中でも一番こだわったところを教えていただけますか。
眞 壁:
色を合わせた所です。
Rouletteのカサは生地・骨組み・石突・露先・手元。違う材料ですが同じ色に見えるようそれぞれ塗装されています。
傘の業界で部品全てを同一にした傘を作り出す事が初めてだったので、依頼をした頃はうまく話が伝わらず日本人の職人さんに理解してもらうのにも時間が必要でした。
各部品によって塗装業者が違うので、色合わせをするまでに約1年かかりました。
その間、何度も職人さんと調節をし、開閉の度に骨の繋ぎ目の間接部分の塗装が剥がれてしまわないように一本ずつ小さな生地を巻きつけてもらったりもしました。これはとても細かい作業で大変な部分だったと思います。
「雨の日の空をカラフルにしたい。雨の日の憂鬱な気分を自分の大好きな色のカサを持つことで少しでも楽しく前向きな日を過ごすことができたら」
自分の作ったカサを持って伝えていくには妥協してはいけないと思いながら作り上げていきました。
私の思いを汲み取り、付き合ってくださった職人さんには本当に感謝してます。
レニピ:
これまでないものを作る、そのためにはかなりの熱量が必要だということがわかりました。実際にRouletteのカサが完成してから、何か変化はありましたか?
眞 壁:
傘が嫌いで一本も持っていないと言っていた私の友人が私のカサを見たり、話をしたりしていくうちに少しずつ考えが変わって、私のカサを持ち歩くようになってからは使うのが楽しみになったと嬉しい声を聞いています。
これは私が今まで活動をしてきた中で一番嬉しかった出来事で、これからも自分のカサを持ちながら少しずつ世の中の傘に対する気持ちが変わる人を増やしていけたらと思っています。
レニピ:
ありがとうございます。最後に、眞壁さんがこれから実現したいことを教えてもらえますか。
眞 壁:
ずっと思ってきたことですが、やっぱり雨の日の暗くどんよりとした空をカラフルな傘で埋め尽くしたいです。
そして生活の中に色を溶け込ませる事の楽しみを教えてくれたParisでも沢山のカサを広げ、傘をあまり持たないフランス人にも雨の日の楽しみを提案してみたいです。
いつか自分が見たいと思った景色に近づけられるよう、今後もRouletteのカサを使って雨の日の楽しみ方を伝えていきたいです。
Interview:眞壁和佳子
Writer:レニピ編集部