霧の街ロンドンというように、ロマンチックな響きの反面、イギリスは天気が悪いイメージがある。
しかし、その評判を広めたのは、実は雨だけではなく、19世紀以降の産業革命と石炭燃料の多量消費により、燃やした後の煙やすすが霧に混じりスモッグとして滞留していたことにも一因がある。
実際のところ、ロンドンの降水量は東京の3分の1程度しかない。日本の様に台風や夕立のような土砂降りは少なく、パラパラと小雨が降ったり止んだりを繰り返す。
イギリスで、天気について話していると話題に事欠かない。この引っ切り無しに変わる天気は、高い山がないのも一因だという。冬の関東平野には、山間部で水分が落ちた後に空っ風が吹き、肌に吹き刺さる。そういった山もないので、結果として、からっと晴れたかと思ったらすぐに曇って、いつまでもグズついている。
年間の平均日照時間は、東京の1,900時間に対し、ロンドンは1,500時間で確かに少ない。夏は比較的天気がよく、高緯度のため、夜10時ごろまで明るく、いつまでもパプの軒先に人だかりが出来ているのを見かけるが、逆に冬は午後4時には真っ暗で、鬱ぎみになる人も多い。
気温については、北海道と同じくらい高緯度の割には、暖流の北大西洋海流のおかげで、比較的暖かいのだが、それでも地中海に比べたらはるかに寒い。
ではイギリスの人は、冷たい雨が降る中、なぜ傘を差さないのだろうか。
外から見ていていると、サッパリわからないが、暮らしてみると合点がいく。
霧雨が主体で、シャーロック・ホームズが来ているようなトレンチコートがあれば、地下鉄の駅からオフィスまで歩く距離なら、襟を立てて首をかがめて歩けば、服の内部まで染み込んでくることは、まずないからだ。
また風が吹いていることが多いため、小さく軽い雨粒は、簡単に横殴りとなり、傘を上に向けて差してもあまり意味がない。逆に強風に煽られて、まともに歩けない。
イギリスで売っている伝統的な傘は強い風にも耐えられるように、どれもがっしりしていているが、その分、重くなり、持ち歩きにはとても不便だ。軽量の折り畳み傘なら、いつ壊れてもおかしくない。
豪雪地のような地域もなく深い雲と霧雨で済んでいるのだから、そんなに悲観視するほどの気候ではない。夏は蒸し暑さがなく、野原でいつまでも昼寝できるような清々しい日も多いのだから、それを楽しみにして、少々、雨風のある冬が長く続くのも、辛抱する甲斐があるというものだ。
writer レニピ編集部